茶家では、十一月の「口切り」、「炉開き」に始まり、冬の「夜咄(よばなし)」や「暁(あかつき)」の茶事、新年の「初釜」や、五月の「初風炉」、夏の「朝茶」、残暑後の「月見」十月の風炉の終わりの「名残(なごり)」と、季節の変化と共に多様な茶事や茶会が催されます。
これらの行事には決まりの菓子があり、一服の茶での一時がもたれます。これらの菓子はどれもそれぞれの行事にふさわしいように特別にあつらえたものです。
千年変わらないという松の翠から、白い薯蕷饅頭に緑色に染めた白小豆を包んだものです。二つに割ると、あたかも雪をかむった松を思わせ、正月の瑞雪にも似た気品のあるお菓子。11代家元碌々斎(ろくろくさい)宗匠御好の菓子で、大勢の初釜等に食籠で出されたりします。表千家では、点初(初釜)に京都・虎屋製を用いるのが恒例になっています。
丸く平らにした白餅に、赤い小豆汁で染めた菱形の餅を薄く作って上に重ね、柔らかくしたふくさゴボウを二本置いて、押し鮎に見立てたものです。あんは京の雑煮にみたてて白味噌あんを使用します。裏千家では、点初(初釜)に京都・川端道喜製を用いるのが恒例になっています。
「柳は緑、花は紅」という、言のように、京の春を、緑色と紅色で染め分けて表し、小豆あんを芯に使ったきんとん仕上げの菓子です。武者小路千家では、点初(初釜)に京都・虎屋製を用いるのが恒例になっています。干支煎餅・千代結びの組合わせは、薄茶の席に用います。