茶碗は茶道において欠かせない茶道具のひとつ。「抹茶椀」とも呼ばれます。
茶の湯文化の広まりとともに、日本各地の伝統工芸品の焼き物でも茶道用の茶碗がたくさん作られてきました。
今回は、茶碗の産地ごとの特徴や選ぶ際のポイントなど、茶道をたしなむうえで知っておきたい茶碗の知識について解説し、最後におすすめの茶碗もご紹介していきます。
茶碗について理解を深めたい方や、茶道用に茶碗を選びたい方はぜひ参考にしてくださいね!
茶道の茶碗は、産地によって、大きく「唐物(からもの)」「高麗物(こうらいもの)」「島物(しまもの)」「和物(わもの)」の4種類に分類できます。
日本には伝統的な焼き物の産地がたくさんあり、国の伝統的工芸品に指定されているだけでも32種類(2021年1月時点)。
権力者が陶磁器製の茶道道具を焼かせるなど、茶の湯文化の流行とともに発展した焼き物産地もたくさんあります。
「一楽二萩三唐津」という格付があることからもわかるように、茶道においては焼き物の種類と特徴を知っておくことも大切です。
いくつか代表的な産地の焼き物について見ていきましょう。
わび茶の世界を完成させた千利休が京都の楽家に作らせたのがはじまりとされる「楽焼」。
てごねで成形しているためわずかなゆがみがありますが、あたたかみと深い味わいがあります。
楽焼は茶道のために考えられたつくりなのも特徴。
「茶筌摺り(ちゃせんずり)」という底が広くなったつくりで茶筌が回しやすくお茶を点てやすいほか、飲み口がやや内向きになっていて、飲むときにお茶が器の外にたれず、美しく飲めるなどの工夫が施されています。
色の違いによって「黒楽」、「赤楽」などがあります。
山口県萩市を中心に作られる「萩焼」。
窯が開かれた土地を治めていた毛利一族が茶道と深いかかわりがあったことから、茶道で使われる茶碗を中心に発展したと言われています。
萩焼の持ち味は、おもに地元でとれる3種類の陶土を混ぜ合わせて作られるあたたかみのある色合いと、窯で焼く過程で自然にできあがる貫入(かんにゅう)と呼ばれるこまかいヒビ模様。
また、このヒビのすき間からお茶などが染み込んで、使い込むほどに器の色合いが変化する「萩の七化け」と呼ばれる経年変化も大きな魅力です。
「唐津焼」は、佐賀県唐津市を中心に焼かれる焼き物。土の味わいが感じられる素朴で渋みがある作風で、茶人たちにも愛されてきました。
唐津焼にはさまざまな装飾方法があって、バリエーションに富んでいることも特徴です。
草花や鳥などを描いた「絵唐津」や、うわぐすりの表面に黒や青のまだら模様ができる「斑唐津(まだらがらつ)」、二種類のうわぐすりが使われ黒白のグラデーションが美しい「朝鮮唐津」などがあります。
桃山時代に始まる岐阜県の美濃焼(みのやき)の一作風で、長石釉(ゆう)(白釉)をかけた陶器の総称。長石に灰を加えた白釉が美濃焼で焼かれ始めるのは室町時代末期(16世紀中葉)とする説もあるが、長石単味の白釉が登場するのは桃山時代前期、天正(てんしょう)から文禄(ぶんろく)にかかる1580~90年代ではないかとする説が有力となりつつある。
美濃(みの)国(岐阜県)東部の美濃窯で焼かれた創造性豊かな陶器。同地は平安時代以来の製陶の伝統があるが、室町末期に至って大きな展開をみせ、とくに新興の「わび」の器、茶の湯の道具に供すべく、茶人の趣向をもった茶具を焼造し始めた。その延長上に桃山時代後半の慶長(けいちょう)(1596~1615)初年から創作され始めたのが織部焼で、作風・意匠のうえに当時の茶道界のリーダー古田織部好みといわれる特色があるため、この名称でよばれる。